AIで議事録を作成する基本の流れは、「録音して文字にする → AIに要約させる → 人が確認する」の3ステップです。AI議事録とは、会議の音声や発言のメモをもとに、生成AIが「決まったこと」「宿題」「期限」などを整理して、議事録の下書きを作ってくれる使い方のことです。手作業でゼロから書くより時間を短くできる一方で、発言の抜けや、意味の小さな変化が起こることがあるため、最後は必ず人が確認するのが前提になります。この記事では、中小企業がAIで議事録を作成するときの方法の選び方、手順、AIへの指示文の例、録音や個人情報の注意点を、わかりやすく整理します。

AIのツールやサービスは、機能・料金・情報の扱いが頻繁に変わります。導入前に、各サービスの公式サイトで最新の情報を確認してください。この記事の指示文や例は、わかりやすくするための想定です。

AIで議事録を作成するとは、どういうことか

議事録づくりは、会議のあとに、多くの時間を取られる作業です。メモを見返し、発言を思い出し、「誰が」「何を」「いつまでに」を整理して、読みやすい文章にする。この一連の作業のうち、「文字に起こす」「要点をまとめる」「形式を整える」の3つは、AIが得意な作業です。

工程 やること AIの得意度 人の役割
① 録音・文字起こし 会議の音声を、文字にする 高い 録音の同意を取る、音声をきれいに録る
② 要約・整理 要点、決定事項、宿題を抜き出す 高い 指示文(まとめ方)を決める
③ 確認・修正 内容が正しいかを見直す 低い(人が必須) 決定事項・担当・期限を確認する

AIは、①と②をとても速く行えます。しかし、③の確認は、会議にいた人にしかできません。「AIに作らせて、人が仕上げる」という役割分担が、いちばん安全で、効果が出やすい形です。

AI議事録の作成手順を、図で整理する

AIで議事録を作成する3ステップ:録音して文字にする、AIに要約させる、人が確認して仕上げる
図1 「録音 → 要約 → 人が確認」の3ステップ

ステップ1 録音して、文字にする

会議の音声を録音し、文字に起こします。方法は、会議のツールに備わっている記録の機能を使う、録音した音声を専用のツールに取り込む、などがあります。ここで大切なのは、録音の前に、参加者に伝えて了承を得ておくことです(くわしくは後の章で説明します)。

文字起こしの精度は、音声のきれいさに左右されます。次のような工夫で、ぐっと良くなります。

  • 話す人が重ならないよう、1人ずつ話す
  • マイクの近くで話す。会議室の場合は、全員の声が拾える位置に機器を置く
  • 専門用語や社名・人名は、あらかじめメモにして、確認しておく

ステップ2 AIに、要約させる

文字になった発言を、生成AIに渡して、要約してもらいます。ここで、結果を大きく左右するのが「指示文」です。「議事録にして」とだけ頼むと、毎回、形がばらばらになります。見出しの形を、先に決めておくのがコツです。

基本の指示文の例(想定)
「あなたは、会議の記録係です。次の発言の文字起こしから、議事録を作ってください。次の形で、箇条書きにしてください。
① 会議の目的(1行)
② 決まったこと
③ 宿題(誰が・何を・いつまでに)
④ 次回までの確認事項
発言にないことは、書かないでください。不明な点は『要確認』と書いてください。
【文字起こし】(ここに貼る)」

指示文の最後にある「発言にないことは、書かない」「不明な点は『要確認』と書く」の一文が、とても大切です。生成AIは、足りない部分を、もっともらしい言葉で補ってしまうことがあります。あらかじめ禁止しておくと、作り話を減らせます。

ステップ3 人が確認して、仕上げる

AIが作った議事録は、見た目が整っているため、つい信用してしまいがちです。しかし、確認の手間を省くと、間違いがそのまま会社の記録として残ってしまいます。次の5点は、必ず人が確認してください。

  1. 決定事項:実際に決まったことと、一致しているか
  2. 担当者:「誰が」やるのかが、正しいか
  3. 期限:日付や期間が、合っているか
  4. 数字・金額:聞き間違いや、書き間違いがないか
  5. 固有名詞:社名・人名・商品名が、正しく書かれているか

AI議事録の作成方法は、3タイプある

AIで議事録を作成する方法は、大きく3つのタイプに分けられます。自社の会議の規模や、情報の扱いのルールに合わせて選びましょう。

AI議事録の3タイプ:会議に参加して自動で記録する専用ツール、録音を取り込むツール、生成AIにテキストを貼って要約する方法
図2 自社の会議の規模と、情報のルールで選びます
① 専用ツール(自動で記録) ② 録音を取り込むツール ③ 生成AIにテキストを貼る
仕組み オンライン会議に参加して、記録・要約までを自動で行う 録音した音声を取り込み、文字起こしと要約をする 手元の文字起こしやメモを、ChatGPTなどに貼って要約する
手軽さ 高い(設定すれば自動) 中(録音データの用意が必要) やや手間がかかる
まとめ方の自由度 ツールの形式による ツールの形式による 高い(指示文で自由に決められる)
情報の扱いで確認したいこと 音声データの保管場所・期間 音声データの保管場所・期間 入力した内容の扱い(規約)
向いている会社(想定) オンライン会議が多い会社 対面の会議が多い会社 まず費用をかけずに試したい会社

どのタイプでも、「入力した内容が、どう扱われるか」を、規約で確認することが大切です。とくに無料のサービスは、有料のものと、情報の扱いが異なる場合があります。会社の会議には、個人情報や社外秘の内容が含まれることが多いため、最初は、機密性の低い社内の定例会議から試すのが安心です。

「どのAIサービスを選べばよいか」については、生成AIとChatGPTの違いとは?中小企業の仕事で迷わない選び方と使い分けで、選ぶときの4つの観点を整理しています。あわせてご覧ください。

会議の種類別、指示文の工夫(想定)

会議の種類によって、議事録に必要な項目は変わります。指示文を少し変えるだけで、使いやすい議事録になります。

会議の種類 指示文に加えるとよいこと
社内の定例会議 「前回からの変更点」「進捗の報告」「宿題と期限」を分けて書く
営業・商談の振り返り 「お客様の課題」「要望」「次の約束」を分ける。金額や納期の発言は、そのまま引用して書く
企画・アイデア出し 「出た案」「採用した案」「保留の案とその理由」を分けて書く
顧客との打ち合わせ 「確認した内容」「お客様からの宿題」「当社の宿題」を分ける。お客様へ送る前に、必ず人が全文を確認する
営業の振り返り用の指示文の例(想定)
「次の商談の文字起こしから、社内共有用のメモを作ってください。項目は、①お客様の課題 ②お客様の要望 ③こちらが約束したこと(期限つき)④次回の予定、の4つです。金額と納期は、発言のとおりに書き、解釈を加えないでください。」

AI議事録で起きやすい、5つの失敗

  1. 重要な発言が、抜けてしまう:長い会議ほど、要約の中で、大事な一言が落ちることがあります。「決定事項」と「宿題」は、元の文字起こしと見比べて確認しましょう
  2. 意味が、少し変わってしまう:「検討します」が「実施します」と書かれるなど、ニュアンスの違いが生まれることがあります。とくに、約束に関わる表現は要注意です
  3. 担当者や期限が、取り違えられる:複数の人が話していると、「誰の宿題か」が混ざることがあります
  4. 専門用語や人名が、誤って文字になる:同じ音でも、違う言葉に変換されることがあります。社内用語は、あらかじめメモを渡しておくと減らせます
  5. 同意を取らずに録音してしまう:技術の問題ではなく、運用の問題です。次の章で説明します

これらの失敗は、「AIの下書きを、人が確認する」という運用で、ほとんど防げます。AIの結果をそのまま共有しないことが、いちばんの対策です。

録音と個人情報は、どう扱えばよいか

AI議事録で、技術より先に考えたいのが、録音と情報の扱いです。

録音の前に、参加者へ伝える

会議を録音したり、AIで記録したりすることを、参加者に事前に伝えて、了承を得るのが基本です。とくに、社外の方が参加する会議や、機密性の高い会議では、会議の冒頭で「記録のため、録音し、AIで文字起こしをします」と告知すると安心です。法律上の扱いは、会議の内容や状況によって変わるため、判断に迷うときは、専門家に確認してください。

入力してはいけない情報を、決めておく

会議の内容には、お客様の名前や、社外秘の数字が含まれることがあります。AIのサービスに入力する前に、入れてはいけない情報を、社内で決めておきましょう。個人情報の扱いについては、個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用について注意を呼びかけています(個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。

  • お客様の名前・連絡先は、伏せ字にしてから入力する
  • 取引の金額や、社外秘の資料の内容は、入力しない(または、情報の扱いが明記された法人向けのサービスを使う)
  • 保管された音声や議事録は、一定の期間のあとに、削除するルールを決める

社内ルールの作り方は、生成AIの社内ルールの作り方に、A4用紙1枚から始める方法をまとめています。

なお、日本の企業でも、生成AIを使う方針を持つ会社は増えています。総務省の令和8年版 情報通信白書では、生成AIを「積極的に活用する」または「活用する領域を限定して利用する」とした企業は、日本全体で68.9%でした(出典:総務省 令和8年版 情報通信白書)。議事録のような社内向けの仕事は、リスクを抑えて試しやすい入り口になります。

導入の進め方:最初の1か月

期間 やること ポイント
1週目 試す会議を1つ選ぶ。入れてはいけない情報を決める 機密性の低い、社内の定例会議から始めます
2週目 録音の告知をして、文字起こしと要約を試す 指示文は、この記事の例をそのまま使って構いません
3週目 人が確認して、直した点を記録する どんな間違いが多いかが分かると、指示文を改善できます
4週目 かかった時間を、以前と比べる。続けるか、広げるかを決める 確認や直しの時間も含めて比べます

議事録づくりは、「頻度が高く」「手順が言葉にでき」「間違えても人が直せる」という、自動化の最初の1つに向いた仕事です。考え方は、業務自動化にAIを使うには|RPAとの違いと、最初に自動化する業務の選び方で、くわしく解説しています。また、議事録以外のAIの使い方は、仕事でのAI活用|中小企業の事務・営業・経理で今日から試せる使い方にまとめています。

導入前のチェックリスト

  1. 試す会議を、機密性の低いものから1つ選んだか
  2. 録音とAI利用を、参加者に伝えて了承を得る手順を決めたか
  3. 使うサービスの規約(入力内容・音声データの扱い)を確認したか
  4. 入力してはいけない情報を、決めたか
  5. 議事録の見出し(決定事項・宿題・期限など)を決めたか
  6. 「発言にないことは書かない」と、指示文に入れたか
  7. 決定事項・担当・期限・数字・固有名詞を、人が確認する手順を決めたか
  8. 音声や議事録の保管期間と、削除のルールを決めたか
  9. 1か月後に、時間の変化を振り返る日を決めたか

よくある質問

Q. AIで議事録を作成すると、どのくらい時間を短くできますか?

会議の長さや、確認の丁寧さによって変わります。文字起こしと要約の下書きは、短い時間でできますが、人が確認して直す時間は、かかります。「確認や直しの時間を含めて、以前より短くなったか」を、1か月試して比べるのがおすすめです。

Q. 無料のAIでも、議事録は作れますか?

文字起こしの結果を貼って要約するだけなら、無料のサービスでも試せます。ただし、無料版は、入力内容の扱いが有料版と異なる場合があります。会社の会議の内容を入れる前に、規約を確認し、個人情報や社外秘は入れないようにしましょう。

Q. 会議を録音するとき、許可は必要ですか?

参加者に事前に伝えて、了承を得ておくのが基本です。とくに、社外の方が参加する会議では、冒頭で告知すると安心です。法律上の判断が必要な場合は、専門家に確認してください。

Q. AIが作った議事録は、そのまま共有してもよいですか?

おすすめしません。発言の抜けや、意味の小さな変化が起こることがあるため、決定事項・担当・期限・数字・固有名詞は、必ず人が確認してから共有してください。

Q. 議事録以外にも、AIは会議に使えますか?

使えます。会議の前に、議題の整理や、聞かれそうな質問の洗い出しに使ったり、会議のあとに、お礼や共有のメールの下書きを作ったりできます。

まとめ

AIで議事録を作成する方法は、「録音して文字にする → AIに要約させる → 人が確認する」の3ステップです。指示文で、見出しの形と「発言にないことは書かない」というルールを決めておくと、安定した下書きができます。一方で、決定事項・担当・期限・数字・固有名詞は、必ず人が確認し、録音の告知と、入力してはいけない情報のルールも、先に決めておきましょう。まずは、機密性の低い社内の定例会議から、小さく試すのがおすすめです。

当社(AnotherWorld株式会社)では、中小企業向けに、AIを仕事に根づかせるためのAI顧問サービスをご用意しています。「議事録づくりから始めたいが、ルールや指示文の作り方が分からない」という方は、お気軽にご相談ください。

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