業務の自動化にAIを使うときは、「いきなり全部を自動にしない」「まず、自動化する業務を仕分ける」ことが、いちばん大切です。AIは、文章を読んだり、内容を判断したりする作業が得意で、これまでのRPA(決まった画面操作を、自動で繰り返す仕組み)では難しかった仕事も、任せられるようになりました。ただし、何でも自動にすると、間違いが気づかれないまま進んでしまうおそれがあります。この記事では、AIとRPAの違い、自動化に向く業務・向かない業務の見分け方、そして、中小企業が小さく始めるための5つのステップを、わかりやすく整理します。

ツールの機能や料金は、変わることがあります。導入前に、各サービスの最新の情報を確認してください。この記事の例は、わかりやすくするための想定です。

業務の自動化とは、どういうことか

業務の自動化とは、人が手作業で行っていた仕事を、仕組みに任せることです。「毎月、同じ表を作る」「届いたメールを、決まったフォルダに分ける」「データを、別のシステムに入力し直す」。こうした作業を、ソフトウェアが代わりに行います。

自動化の方法は、大きく3つに分けられます。

方法 特徴 向いている仕事
ルール型の自動化(RPAなど) 「こうなったら、こうする」と、決めた手順を、そのまま繰り返す 手順が毎回同じで、大量にある作業(データの転記、定型の入力など)
つなぎ型の自動化(ノーコードのツールなど) 複数のサービスを、つないで連動させる。プログラムを書かなくても、設定できる 「フォームに入力があったら、通知を送る」など、サービス間の受け渡し
AIによる自動化 文章や画像の内容を読み取り、判断や文章作成まで行う 文章の要約・分類、返信の下書き、内容の読み取りなど、毎回少しずつ違う仕事

この3つは、どれかを選ぶものではなく、仕事の性質に合わせて、使い分けたり、組み合わせたりするものです。

AIとRPAは、何が違うのか

よく比べられるのが、AIとRPAです。ひとことで言うと、RPAは「手を動かす自動化」、AIは「頭を使う自動化」です。

RPA AI(生成AIなど)
得意なこと 決まった手順を、正確に、大量に繰り返す 文章を読む・まとめる・作る、内容に合わせて判断する
苦手なこと 手順が毎回変わる仕事、文章の意味を読み取る仕事 1円の誤差も許されない計算、結果が毎回ぶれては困る仕事
仕事の変化への強さ 画面のつくりが変わると、止まりやすい 言葉で指示するため、多少の変化には対応しやすい
答えの安定性 毎回、同じ結果になる 毎回、少しずつ違う結果になることがある
導入の入り口 手順の設計や設定が必要 文章で頼むだけで、試せる

「AIのほうが新しいから、AIにすべて置き換えればいい」というわけではありません。たとえば、会計のデータ入力のように、毎回まったく同じ結果になってほしい仕事は、ルールに沿って動くしくみのほうが、向いていることがあります。一方で、「届いた問い合わせの内容を読んで、種類を分ける」ような仕事は、AIの得意分野です。

中小企業の場合、専任の担当者を置きにくいため、まず、文章で頼めるAIから試し、画面操作の繰り返しが多く残る仕事にだけ、ほかの自動化の道具を足していく、という進め方が現実的です。これは、あくまで一般的な考え方で、自社の仕事の量や費用に合わせて、判断してください。

自動化する業務は、4つに仕分けてから決める

自動化で失敗しやすいのは、「とりあえず、目についた作業から始める」ことです。そうではなく、最初に、自社の仕事を4つに仕分けます。

業務の4つの仕分け:AIに任せる、ルール型で自動化、人が決める、そのまま残す
図1 「手順が決まっているか」「判断が要るか」で仕分けます
  1. AIに任せる仕事:手順は毎回少し違うが、文章を読んだり、作ったりする仕事(メールの下書き、要約、分類など)
  2. ルール型で自動化する仕事:手順が毎回同じで、判断が要らない仕事(データの転記、決まった通知の送信など)
  3. 人が決める仕事:金額、契約、クレーム、人の評価など、責任を伴う判断
  4. そのまま残す仕事:回数が少なく、自動化する手間のほうが大きい仕事

仕分けをするだけで、「実は、自動化しなくてもいい仕事」や、「人が決めるべきなのに、いつの間にか流れ作業になっていた仕事」が、見えてきます。これは、自動化の効果を出すために、とても大切な作業です。

最初に自動化する業務を選ぶ、3つの条件

仕分けのあと、「どれから始めるか」を選びます。次の3つの条件に、当てはまるものを選んでください。

条件① 頻度が高い(毎日・毎週、何度もやる)

月に1回の作業を自動化しても、効果は小さくなります。毎日、または毎週、何度も繰り返している作業を選ぶと、効果を実感しやすくなります。

条件② 手順を、言葉で説明できる

「人に、順番に説明できる作業」は、自動化に向いています。逆に、「見て覚えろ」「感覚でやっている」という作業は、まず、手順を書き出すことから始めます。この作業自体が、業務の見直しになります。

条件③ 間違えても、影響が小さい

最初に選ぶ仕事は、間違えても、人が見て直せるものにします。お客様に直接届く文章や、お金に関わる処理は、あとの段階にします。

最初に向いている仕事の例(想定)
・会議のメモから、議事録の下書きを作る
・届いた問い合わせを、「資料請求」「見積もり」「その他」に分類する
・毎週の報告メールの、下書きを作る
・フォームに入力があったら、担当者に通知する
最初は避けたほうがよい仕事の例(想定)
・請求金額や、給与の計算
・契約書の最終的な判断
・クレームへの返信を、人の確認なしで自動送信する

小さく始める、5つのステップ

業務自動化を小さく始める5つのステップ:書き出す、仕分ける、1つ選ぶ、試す、広げる
図2 1つの仕事で試してから、広げます

ステップ1 毎日・毎週の作業を書き出す

1週間、自分や部署の作業を、メモに残します。「何を」「どのくらいの時間」「どのくらいの頻度で」行っているかを、書き出してください。細かい数字でなくても、構いません。

ステップ2 4つに仕分ける

書き出した作業を、先ほどの「AIに任せる」「ルール型で自動化」「人が決める」「そのまま残す」の4つに分けます。

ステップ3 1つだけ選ぶ

3つの条件(頻度が高い・手順が言葉にできる・間違えても影響が小さい)に合う仕事を、1つだけ選びます。複数を一度に始めると、うまくいったかどうかが、分からなくなります。

ステップ4 1か月、試して、記録する

選んだ仕事を、AIや自動化の道具で、1か月試します。この間は、必ず人が結果を確認します。確認するときは、次のことを記録します。

  • どのくらい、時間が減ったか
  • 間違いは、何回あったか
  • 直す手間は、どのくらいだったか

ステップ5 うまくいったら、広げる

効果が確かめられたら、似た仕事に広げます。うまくいかなかった場合は、原因を確かめて、やり方を変えるか、その仕事は自動化しない、と決めます。「やめる判断」も、大切な成果です。

業務ごとに見る、AIで自動化できること(想定の例)

議事録・報告書づくり

会議のメモや、録音を文字にしたものをAIに渡すと、「決まったこと」「宿題」「期限」に整理した下書きを作ってくれます。人は、内容が正しいかを確認して、直すだけになります。

問い合わせ対応

問い合わせの内容を、AIが読んで、種類ごとに分類したり、返信の下書きを作ったりします。ただし、いきなり自動で送ると、誤った回答やお約束をしてしまうおそれがあります。受付確認の自動送信から、段階的に進めるのが安全です。詳しくは、問い合わせのAI自動返信|中小企業が失敗しない始め方3ステップで解説しています。

メール・文書の下書き

お礼、案内、依頼など、定型に近い文章は、AIの得意分野です。担当者によって、書き方にばらつきが出るのを抑える効果もあります。使い方の具体例は、仕事でのAI活用|中小企業の事務・営業・経理で今日から試せる使い方にまとめています。

データの整理・転記

表やリストの整理、決まった形式への書き換えなどは、ルール型の自動化と、AIの両方が使える分野です。形式が毎回同じならルール型、形式がばらばらならAI、というように使い分けます。

1か月の試験運用で、見ておきたい数字

ステップ4の「1か月、試して、記録する」について、もう少し具体的に書きます。「うまくいったかどうか」を、気持ちではなく数字で判断できるようにしておくと、続けるか、やめるか、広げるかの判断が、ぐっと楽になります。

見る項目 記録のしかた 判断の目安(想定)
かかった時間 自動化の前と後で、1回あたりの作業時間を比べる 確認や直しの時間を含めても、短くなっているか
間違いの数 人が確認して見つけた間違いを、回数で記録する 回数が多いなら、AIへの指示や、材料の渡し方を見直す
直す手間 AIの出した下書きを、どのくらい直したかをメモする ほとんど直しているなら、その仕事はAIに向いていないかもしれない
担当者の感想 使ってみて「楽になった」「やりにくい」を、一言で聞く 数字に出ない、使いにくさを拾う

ここで大切なのは、「確認や直しにかかった時間」も、作業時間に含めて比べることです。AIが下書きを作る時間は短くても、直すのに同じくらいかかっては、楽になったとは言えません。逆に、最初は直しが多くても、指示の出し方を工夫するうちに、直しが減っていくことがよくあります。1か月の間に、指示文を少しずつ改善して、その変化も、記録に残しておきましょう。

こうして記録した数字は、社内で「続けましょう」「広げましょう」と説明するときの、大切な材料にもなります。「なんとなく良さそう」ではなく、「この作業は、1回あたりこのくらい短くなりました」と言えると、周りの人も納得しやすく、次の自動化に、協力してもらいやすくなります。

自動化で、失敗しやすい4つのこと

  1. 手順を整理せずに、自動化する:もともと無駄の多い手順を、そのまま自動化しても、無駄が速くなるだけです。先に、手順を見直します
  2. 人の確認を、なくしてしまう:「自動だから安心」と、確認をやめると、間違いが広がります。とくに最初のうちは、必ず人が見ます
  3. 担当者が、1人しか分からない:自動化の仕組みが、1人の頭の中にしかないと、その人が休んだとき、止まります。手順を、書き残します
  4. 効果を測っていない:「何となく楽になった気がする」では、続けるかどうかを判断できません。時間や間違いの数を、記録します

失敗の原因や、始める前に決めておくことは、中小企業のAI導入が失敗する5つの原因でも整理しています。あわせて読むと、つまずきを避けやすくなります。

自動化の前に、決めておきたいルール

自動化の対象には、お客様の情報や、社内の情報が含まれることがあります。AIのツールに入力してよい情報と、いけない情報を、先に決めておきます。国の機関も、生成AIの利用について、注意を呼びかけています。たとえば、個人情報保護委員会の注意喚起は、導入の前に目を通しておくとよい資料です。また、AIを進める際の考え方は、経済産業省が公開しているAI導入ガイドブックも参考になります。

社内のルールの作り方は、生成AIの社内ルールの作り方に、A4用紙1枚から始める方法をまとめています。

導入前のチェックリスト

  1. 毎日・毎週の作業を、書き出したか
  2. 4つ(AI/ルール型/人が決める/そのまま)に仕分けたか
  3. 最初に選ぶ仕事は、「頻度が高い・手順が言葉にできる・間違えても影響が小さい」を満たしているか
  4. 最初の1か月は、人が必ず結果を確認する、と決めたか
  5. 時間と間違いの数を、記録する方法を決めたか
  6. AIに入力してはいけない情報を、決めたか
  7. 手順を、書き残す担当を決めたか
  8. 1か月後に、続けるかどうかを判断する日を決めたか

よくある質問

Q. AIとRPAは、どちらから始めるのがよいですか?

文章を読んだり作ったりする仕事が多いなら、AIから試すのが始めやすいです。画面操作の繰り返しが多く、手順が毎回同じなら、ルール型の自動化も検討します。まず、仕事を仕分けて、どちらが向いているかを見分けましょう。

Q. 小さな会社でも、業務の自動化は効果がありますか?

あります。大きなシステムを入れなくても、議事録の下書きや、メールの下書きなど、小さな作業から効果が出ます。少人数だからこそ、1人あたりの作業時間が減る効果は、大きくなります。

Q. 自動化すると、人の仕事はなくなりますか?

手作業の時間は減りますが、「確認する」「判断する」「お客様と話す」といった仕事は、人が担い続けます。AIに任せるのは、「手を動かす時間」で、人は「考える時間」に使うことが、目的です。

Q. 費用は、どのくらいかかりますか?

使うツールや、規模によって大きく変わります。文章で頼める生成AIは、無料や月額の少ない金額から試せるものもあります。料金は変わることがあるため、導入前に、各サービスの最新の情報を確認してください。

まとめ

業務の自動化にAIを使うときは、「仕分ける → 1つ選ぶ → 人が確認しながら1か月試す → 効果を見て広げる」の順に進めるのが、安全です。AIは「頭を使う仕事」、ルール型は「手を動かす仕事」、そして、金額や契約、クレームなど責任を伴う判断は「人が決める」と、役割を分けましょう。

当社(AnotherWorld株式会社)では、中小企業向けに、仕事の仕分けから、小さな自動化の進め方までを、毎月の面談でお手伝いするAI顧問サービスをご用意しています。「どの仕事から自動化すればよいか、分からない」という方は、お気軽にご相談ください。

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