働き方改革が声高に叫ばれる昨今、「テレワーク」というキーワードに俄然注目が集まっていますが、実際に導入する際に、テレワークに必要な環境はどのようなものなのでしょうか。

最近では主にデスクワークに従事する社員に対してテレワークを許可・推奨する企業が次々と出てきており、国もこれをサポートする構えを見せていることから、今後この流れは加速していくことは間違いなさそうです。

今回、さまざまな企業・団体で導入が進みつつあるテレワークに対して、在宅勤務者はどのように対応していけばよいかについて考えていきたいと思います。

基本的にテレワーク・在宅勤務は自宅が「オフィス」

テレワーク 必要な環境

テレワークを行う在宅勤務者は基本的に自宅がオフィスになります。

※勿論、コアワーキングスペースやカフェなどを活用する場合もありますが、今回は自宅という前提で話を進めていきます。

となると業務に必要な労働環境を自宅内で整備していくことが求められます。

情報通信関連企業や学術研究機関を始め、製造業、医療機関、不動産業などさまざまな業界団体で導入が進んできているテレワークですが、テレワーカーとなる在宅勤務者は自宅での業務を遂行すべく、まずは情報通信機器を揃える必要があります。

テレワークの際に必要となる代表的な情報通信機器としては、パソコン、タブレット、スマートフォン、USBメモリなどが挙げられます。

また、各業務に対応したアプリケーションソフトも必要になってきます。

これらは会社で支給されるケースもあれば、自分が所有しているものを使うケースもあるでしょう。

快適に、安全にテレワーク・在宅勤務を進めるためには

テレワーク 安全

さて、いざテレワークを始めて自宅がオフィスになったとして、通勤時よりもワーカーのパフォーマンスが低下してしまったらどうでしょう? 

導入企業の立場から見てテレワークはコストメリットを欠き、継続する価値の低いものになってしまいます。

テレワーク・在宅勤務を行うからには、業績を挙げて会社に貢献し、かつ自身のスキルアップにもつなげていくという、WIN×WINの関係を築いていくことが理想です。

そのためにはテレワーカーはICTの活用スキルを最大限化し自らのパフォーマンスを高めていく必要があります。

たとえばテレワーク・在宅勤務の課題である「スタッフ間のコミュニケーション」について言えば、Eメールはもちろん、ライン、チャットワーク、スカイプなどの操作は最低限マスターすべきでしょう。

これらを駆使して文字・写真・図版・動画・音声など視聴覚をフルに使ったコミュニケーションをオンライン上で高度化し、対面で行うのと同等の、あるいはそれ以上の濃密で生産性の高いコミュニケーション活動が行えればテレワークの有用性と社会認知度がますます高まっていくことは間違いありません。

参考1: ICT成長戦略会議|総務省
参考2: ICT利活用の促進|総務省

テレワーク・在宅勤務の環境作りに必要なもの3つ

テレワーク 必要な環境

テレワーク・在宅勤務を充実させるために、より必要になってくるのは前述したとおり、自宅の情報通信機器の環境整備です。

テレワークの作業効率を高める具体的な要素としては、

  1. 安定したネット環境
  2. 必要なスペックが備わったマシン
  3. 作業しやすいワークスペース

の3つを挙げることができます。

以下にそれぞれについて見ていきたいと思います。

安定したネット環境

作業を行っていて、なかなか画面が切り替わらない、漢字変換が遅いなど、操作に対するストレスが続くと仕事のモチベーションもより低下しやすくなります。

画面のスクロール、文字入力、クリックしてからの画面切り替えなど、自分の動きにすばやく、サクサク反応してくれるパソコンを使えば、やはり作業効率はよくなります。

また高速で安定したネット環境を構築したいならば、光回線がお勧めです。

光回線の中でもとくに速度が速いのがNUROひかり、auひかり、So-net光などのPPPoEという通信方式を採用しているものです。

これらの光回線は下り速度が1~2Gbpsあり、かつ通信制限がないので容量の大きい動画系のコンテンツでも快適に見ることができます。

複数のアプリケーションソフトを活用してのマルチタスクもサクサクと行えます。

テレビCMなどでも露出があるのでご存じの方もいると思いますが、「SoftBank Air」のようにインターネットの回線工事の必要がなく、端末が届いたその日に電源をいれるだけで簡単にネット使い放題が利用できるサービスもあります。

光回線や高速のWifiなど様々な会社がサービスを提供していますので、価格やネットの速度など十分に比較検討して導入されるのがベストです。

必要なスペックが備わったマシン

自宅を城として、そこでの作業をメインとするならば、使うマシンはデスクトップ型のパソコンが最適でしょう。

デスクトップ型のメリットは何と言ってもより大きな画面で作業ができることにあります。

これにより複数のソフトを使っての同時作業がよりスムースに行えます。

またキーボードも大きいので、ノートパソコンのように両肩をせばめての窮屈な入力作業をすることもありません。

眼の疲れも比較的起こりにくいので長時間の作業に適しています。

また、デスクトップ型のパソコンはノートやタブレットよりも基本的にCPUやメモリなどの容量が大きくなっているため、処理能力が高いというメリットがあります。

メモリの増設も容易に行え、パフォーマンスを引き上げやすいメリットもあります。

より多くのソフトを駆使して、複雑多岐な作業をこなしていくにはやはりパソコンはデスクトップ型にするべきでしょう。

自宅にとどまらず、場所にこだわらず作業をしたいという人はノートパソコンやタブレットにする必要がありますが、こと在宅勤務に限っていえば、使うパソコンはデスクトップ型にした方がより多くのメリットを享受できるということをここで繰り返し強調しておきます。

作業しやすいワークスペース

テレワーカーは自宅が仕事現場になります。

ワークスタイルはフリーランサーに近いものと考えてよいでしょう。

パソコンを置いてなお書き作業などのスペースが確保できる机、長時間座っていても疲れにくい椅子、プリンター・スキャナーなどを置ける台、そしてこれらを収容できる部屋が必要になります。

Web担 高橋
Web担 高橋
僕の場合は特に「椅子」にこだわりました。
オフィスチェア パソコンチェア オフィス デスクチェア PCチェア ワークチェア 椅子 チェア イス いす 事務椅子 学習椅子 テレワーク オフィスチェアー リクライニングチェア ロッキングチェア メッシュ ハイバック フットレスト キャスター DEVAISE

テレワークを自宅で行うとすれば、4.5~6畳の部屋なら半分近くを作業スペースに充てる必要があるでしょう。

自分一人なら問題ないですが、家族がいる人は、それだけのスペースを自分の仕事のために確保する必要があるということについて、あらかじめ家族の了解をきちんと得る必要があります。

また、仕事場が自宅になるテレワークは、フリーランサーのように時間の制約にとらわれないワークスタイルへと変わりやすい傾向があります。

決まった時間に通勤をせず、自宅で作業ができる分、オンとオフの切り替えが難しくなることを念頭に置いておきましょう。

定時出勤をすることで自然にできていた規則正しい生活が損なわれることで、体調不良になったり、家族に迷惑をかけたりすることがないよう注意しましょう。

ネットワークのセキュリティ管理はテレワークの生命線

テレワーク セキュリティ

自宅でのテレワークでは、当然WEBを活用します。

そうすると、勤務先で行われているウイルス対策、情報漏洩対策などが施されていない通信環境が大半のケースだと考えられます。

こうした環境で、会社の基幹システムにアクセスし作業を行うことでコンピュータウイルスやワームなどに感染してしまうと、機密情報が外部に流出してしまったり、社内の基幹システムのプログラムが崩壊させられてしまったりするリスクがどうしても出てきてしまいます。

また管理者にしてみれば、テレワーカーが機密情報を外部に漏らすリスクを抱えることになります。

そのためにテレワークを進めるに際してはテレワーカーもその管理者もより厳格なセキュリティ対策を行う必要があります。

テレワークにおけるセキュリティ対策の考え方

総務省では2018年4月、『テレワークセキュリティガイドライン第4版』というテレワークのセキュリティ対策を指南する報告書を発行しました。

このガイドラインで、「テレワーク勤務者はオフィスから目の届きにくいところで作業をすることになるため、ルールが守られているかどうかを企業・組織が確認するのが難しい」としています。

引用元: テレワークセキュリティガイドライン第4版

セキュリティ対策は企業がテレワーカーにどの程度の権限を与えるかで変わってきます。

データの漏洩を徹底的に防ぎたい企業は、機密データをテレワーカーの自宅に持ち込ませないようにするためにクラウドサーバー上のみでの作業しか認めないという対策を取るところがあります。

また、コンピュータウイルスによるデータ損傷を防ぎたい企業は、テレワーカーの端末との直接アクセスを避け、USBなどの媒体にコピーさせて作業させる対策を取るところもあります。

ワークスタイルがサテライト型となるテレワークでは、安全性・利便性・効率性・予算の関係などさまざまな観点からセキュリティ対策を検討し、ルール作りを行っていく必要があります。

この点について総務省はガイドラインで、

関係者への教育や自己啓発を通じてルールの趣旨を自ら理解し、ルールを遵守することが自分にとってメリットになることを自覚してもらうことが重要です。また、テレワーク勤務者が情報セキュリティに関する必要な知識を習得していれば、フィッシングや標的型攻撃等の被害を受けにくくなります。

との見解を示しています。

経営者によるセキュリティ対策

『テレワークセキュリティガイドライン第4版』では、経営者が実施すべきセキュリティ対策を明示しています。以下に要約すると、

  • セキュリティ対策の基本的な考え方(セキュリティポリシー)を打ち出し、定期的にチェックと見直しを行う。
  • 重要性に基づき情報のレベル分けを行い、テレワークで扱える情報と扱えない情報を区分けする。
  • テレワーク従事者がセキュリティポリシーを守って作業するための教育・啓発活動を定期的に実施させる。
  • 万一情報セキュリティに関連する事故が発生した場合、迅速な対応が取れる体制を整備し、事故時の対応訓練を実施させる。
  • テレワークにおける情報セキュリティ対策のために必要な人材・資源に必要な予算を確保する。

といった点を重要事項として挙げています。

システム管理者によるセキュリティ対策

『テレワークセキュリティガイドライン第4版』では、システム管理者が実施すべきセキュリティ対策についても明示しています。以下に要約すると、

  • 経営者の明示したセキュリティポリシーに準拠し、セキュリティ対策を実装化する。
  • 情報レベルに応じて、データに対するアクセス制御、暗号化や印刷可否のルールなどをシステム上で設定する。
  • テレワーク従事者がセキュリティポリシーを守って作業するための教育・啓発活動を定期的に実施する。
  • 情報セキュリティに関連する事故が発生した場合、迅速な対応が取れる体制が構築されているかチェックし、事故時の対応訓練を実施する。

といった内容を重要事項として挙げています。

テレワーク従業員によるセキュリティ対策

『テレワークセキュリティガイドライン第4版』では、テレワーク従業員が実施すべきセキュリティ対策についても明示しています。以下に要約すると、

  • 利用情報の資産管理の責任を自らが負っていることを認識し、セキュリティポリシーに準拠しての実務を行う。
  • 経営者・管理者が示したデータの暗号化、印刷可否のルールを守る。
  • 経営者・管理者が実施するセキュリティに関する教育・啓発活動に参加し、かつその活動に積極的に取り組み、セキュリティへの認識を高めるようにする。
  • 経営者・管理者が示した情報セキュリティ事故発生時の連絡体制を現場レベルで確認し、情報セキュリティに関連する事故が起きた場合の対応訓練があれば参加する。

といったものになります。

機密情報の漏洩などに関してテレワーク従業員に過失があり、企業に損失を与えた場合、その責任はテレワーカーが負うことになり、結果的に自らで重大な損失を招きかねないことをテレワーカーは自覚しておく必要があります。

テレワークのセキュリティ対策で注意すべき点

NPO日本ネットワークセキュリティ協会の調査において、テレワーカーが会社の機密情報を紙に印刷し、それが外部に流出してしまったというケースが情報漏洩事故の約半数(47%)を占めていることを報告しています。

そのため総務省では、セキュリティ対策では紙での出力に際してルールを定めることを推奨しています。

インターネットファックスなら送受信したファックスはデジタルデータとして管理することができますし、デジタルデータなので過去のファックスデータを探すときも容易になります。

Web担 高橋
Web担 高橋
インターネットファックスに関してはこちらの記事に詳細をまとめました。

またテレワーカーは自宅で自由にWEBサイトを閲覧できる環境にあります。

そうなると危険なサイトにアクセスしたり、さまざまなアプリケーションソフトをインストールしたりすることでコンピュータウイルスやワームなどのマルウェアを持ち込み、会社のコンピュータシステムに伝染させてしまうリスクが増えることになります。

こうした点を防ぐにはシステム管理者がフィルタリング設定などを行う必要がありますが、テレワーカー個人のパソコンを会社の業務に使う場合には、プライバシーの権利に注意しながら進めていく必要があります。

会社側でセキュリティ遵守への要望が強い場合には、個人で使うには不自由であるケースが多くなってしまうので、会社からパソコンやタブレットを支給してもらう方がよいでしょう。

テレワークの環境整備に会社はどこまで費用負担するべきなのか?

テレワーク 費用

企業によるテレワークはこれまでにない労働形態なので、導入する会社から見れば手探り状態です。

実際に自社のヒト・モノ・カネといった経営資源をどの程度テレワークに割けばよいのかは皆わからないのです。

多くの経営者は、うちの会社にテレワークは適さないのではないかと考え、しばらく静観を決め込みたいところでしょう。

総務省でも『テレワークセキュリティガイドライン第4版』において、

テレワーク向けの情報セキュリティ対策は単に多額の投資を行えばよい、というものではありません。自社のテレワークにおいて何を実現し、何を守るべきかを明確にした上で、その実現に適した方法を選び、その方法に必要な投資を行うことが重要です。

といった方向性を示す表現にとどめています。

とはいえ、総務省はテレワークを、「企業の競争力強化」、「新規ビジネスの創出」、「労働形態の変革」、「事業の継続性向上」をもたらすワークスタイルとして着目しており、政府や地方自治体でもこれを受けてテレワークを推進する動きが強まっています。

今、国や地方自治体ではテレワークをとりあえずやってみようと手を挙げる企業を待っているのです。

「テレワークを導入するには多額の費用が必要で、中小企業には負担が大きい」と考える経営者に対して、厚生労働省では、実際にテレワークを導入した場合、ICTシステムの多くは初期導入コストが安いものが多く、月額利用料は助成金が適用できれば少額ですむということを「テレワーク総合ポータルサイト」で報告しています。

引用元: 厚生労働省・テレワーク総合ポータルサイト

コストではなく投資 ― テレワーク 助成金も積極的に活用

ここでテレワーク助成に対する具体的な行政機関の取り組みを少し紹介します。

働き方改革を推進している厚生労働省では、2019年から「時間が労働等改善助成金(テレワークコース)」を開設し、中小企業に対しての助成を行っています。

この助成制度では、

  • VPNルーターなどのテレワーク用通信機器(パソコン、タブレット、スマートフォンは含まれない)の導入
  • テレワークシステムの保守サポート
  • クラウドサービスなどの導入
  • 外部専門家によるコンサル

などにかかる費用に対し、1企業あたり100~150万円、対象労働者1人あたり10~20万円の助成を行っています。

引用元: 厚生労働省・時間外労働改善助成金(テレワークコース)

また公益財団法人東京しごと財団では、つい先日(2020年3月5日現在)新型コロナウイルス感染症の拡大防止策、及び緊急時における企業の事業継続策として、「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を開設しました。

この助成制度は、「令和2年6月30日までに完了する事業」と期間を限定していますが、テレワーク事業で、パソコン・タブレット・VPNルーターなどの機器類の購入や設置、ネットワークシステムの保守委託料、パソコンなどのリース料金、クラウドサービス利用などを行う中小企業に250万円を上限とする助成を始めました。

引用元: 東京しごと財団・事業継続緊急対策(テレワーク)助成金

まとめ:テレワークはセキュリティ対策が必須、環境整備は専門家に依頼した方が良い?

今回この記事で、テレワークに対して個人・企業がどのように取り組んでいけばよいかということから、国の動きがテレワーク推奨に向かっていることなどについて紹介してきました。

テレワークを実際に行うには、ネットワークシステムやコンピュータのことを熟知し、管理・保守するための知識・ノウハウを持っている専門家の介入が必要になってきます。

そういう意味では、社内外のスタッフにITストラテジスト試験やシステムアーキテクト試験などに合格した高度情報処理技術者などがいて、そういう人材が関与すれば、より心強いでしょう。

一方で、厚生労働省は専門家なしでもテレワークが導入可能であることを明示しています。

実際に今のテレワーク用のアプリケーションソフト(リモートアクセスシステム、WEB用会議システム、労務管理システムなど)はユーザー自身で設定できる仕様のものが多くなっており、これらを活用すれば専門家なしでもテレワークが導入できるとしているのです。

ちなみに厚生労働省ではテレワーク相談センターを開設しており、企業が導入するための手順、助成金の申請手続きなどを指導してくれる他、テレワークを導入したい企業に労務管理の専門家を無償で派遣する事業を行っています。

引用元: テレワーク相談センター

これまで紹介したように、今、国はテレワークを積極的に推奨し、日本経済の活性化を図っています。

この国の舵取りは果たして奏功するのでしょうか? 

それについてはICTを介してのコミュニケーション活動が、企業・個人の日常業務において、どれくらい生産性・効率性を向上させることができるか、あるいはまた、どれくらい深いレベルで行えるか、多くの人がどれくらい手軽にできるか、といった点に負うところが大きいと言えるでしょう。